妻のココナラサービスは、売れていないわけではありませんでした。
受付枠を開ければ、すぐに依頼が入る。
常に満枠に近く、購入者からの評価も積み上がっている。
それでも、使っている時間に対して得られる売上は大きくありませんでした。
問題は集客ではなく、価格にある。
私はそう考えました。
今の状況なら、価格を上げた方がいいと思う
うーん……
枠を開ければすぐ売れるんだから、需要は十分にあるよね
そうなんだけど……
何が気になる?
値段を上げるなら、
その分もっとちゃんとしたサービスにしないといけない気がする
妻は、値上げそのものを否定しているわけではありませんでした。
ただ、高い金額を受け取ることに強い抵抗がありました。
今と同じ内容のまま価格だけを上げるのは、購入者に対して申し訳ない。
値上げするなら、鑑定内容を増やさなければならない。
文章をもっと長くする。
質問への対応範囲を広げる。
購入後のフォローも増やす。
価格に合わせて、今よりさらに良いサービスを作らなければならない。
妻はそのように考えていました。
しかし、それでは何も解決しません。
価格を上げても、その分だけ作業を増やせば、妻の負担は減らないからです。
値上げすれば、仕事も増やさなければならない?
今より高くするなら、何か追加した方がいいよね
どうして?
だって、お客さんから見たら値段だけ上がることになるじゃん
今のサービスは、その値段に見合っていないの?
見合っていないとは思わないけど……
もっと高くするほどのものなのかなって
それは誰が決めるんだろう
誰って?
聖だけで決めることではないんじゃない?
妻は、自分のサービス価値を自分の感覚だけで判断していました。
自分にとって占いは、長年続けてきた仕事です。
相談内容を読み解くことも、鑑定結果を文章にまとめることも、
妻にとっては日常になっています。
本人にとって当たり前にできることは、価値を低く見積もりやすいものです。
妻からすれば、
「これくらいのことに、高い金額をもらっていいのだろうか」
という感覚だったのだと思います。
しかし、購入者は妻と同じ技能を持っているわけではありません。
自分では整理できない悩みがある。
今後どう進めばいいか分からない。
誰かに話を聞いてほしい。
そうした理由で、妻のサービスを選んでいます。
妻にとって日常的な技能でも、購入者にとっては自分では得られない価値です。
聖が簡単だと思っていることでも、
お客さんにとって簡単とは限らないよ
それはそうかもしれないけど
それに、今の値段で枠を開ければすぐ売れるんだよね
うん
だったら少なくとも、今の価格より高くても
欲しいと思ってくれる人がいる可能性は高いと思う
価格を決めるとき、提供者自身の感覚はもちろん重要です。
しかし、最終的にその価格で購入するかどうかを決めるのはお客さんです。
高いと思えば買わない。
それでも必要だと思えば購入する。
サービスの価値は、提供者が一人で決めるものではありません。
市場との間で決まっていくものです。
安く提供することは、本当に親切なのか
妻が値上げをためらっていた理由には、購入者への申し訳なさもありました。
これまで利用してくれた人が、値上げによって購入できなくなるかもしれない。
長く利用してくれている人を裏切るように感じる。
困っている人へ、なるべく利用しやすい価格で提供したい。
高くしたら、今まで来てくれた人が頼めなくなるかもしれない
そうなる人はいると思う
やっぱり申し訳ないよ
でも、今のまま無理を続けることは、
本当にその人たちのためになるかな
どういうこと?
疲れ切った状態で鑑定を続けたら、
いつかサービスそのものを続けられなくなるかもしれないよね
価格を低く抑えれば、利用できる人は増えます。
購入者にとってはうれしいことです。
しかし、その価格によって提供者が疲弊し、
サービスを続けられなくなるなら、長期的には誰のためにもなりません。
妻は、依頼が多いほど頑張って対応していました。
疲れていても、相談者が待っていると思えば鑑定を進める。
少し休みたいと思っても、受付を再開する。
その状態が続けば、心にも身体にも余裕がなくなります。
余裕がなくなれば、一件ごとの相談に丁寧に向き合うことも難しくなるかもしれません。
安く提供することだけが、お客さんのためではないと思う
でも、高くするのもお客さんのためってこと?
少なくとも、無理なく続けられる状態を作ることは、
お客さんのためでもあると思う
良いサービスを一度提供することと、良いサービスを継続して提供することは違います。
継続するには、提供者側にも余裕が必要です。
適切な休息。
考えるための時間。
一件の相談に向き合う集中力。
仕事以外の生活。
それらを削り続けて成り立つ価格は、事業として健全とは言えません。
離れていく人は、妻を必要としていないのか
値上げをすれば、購入者は減ります。
これは避けられないと思いました。
価格を上げたら、依頼数は減ると思う
やっぱり減るよね
うん。むしろ、減ってもらわないと困る
困るって……
今は依頼が多すぎて時間がないんだから、
値上げしても同じ人数が来たら何も変わらないよ
それはそうだけど
価格を上げて客数を減らす。
妻にとっては、少し冷たい考え方に聞こえたかもしれません。
しかし私たちが解決したかったのは、売上不足ではありません。
過剰な稼働です。
ブログへ挑戦する時間がない。
夫婦で新しい事業を作る余裕がない。
今の働き方がつらい。
そこから抜け出すには、依頼数を減らす必要がありました。
たとえば、価格を倍にして依頼数が半分になったら、
売上は変わらないよね
計算上はね
でも、使う時間は半分になる
そんなにきれいに減るかな
そこはやってみないと分からない。
でも、今より客数が減る方向に動かないと、
時間は作れないと思う
価格を上げて離れていく人が、妻のサービスに価値を感じていなかったとは限りません。
利用したい気持ちはあっても、その価格では難しい人もいるでしょう。
そのことを軽く考えるつもりはありません。
一方で、低価格だから購入していた人と、
価格が上がっても妻の鑑定を受けたい人は、同じではありません。
妻のサービスを本当に必要としている人へ、妻が無理なく向き合える状態を作る。
そのために客数を調整することは、購入者を切り捨てることとは違うと私は考えました。
妻は、自分の価値を低く見積もっていた
妻は、ココナラで長くプラチナランクを維持していました。
多くの相談者から依頼を受け、評価を積み上げてきました。
それでも本人は、自分のサービスに高い価格を付けることをためらっていました。
私よりすごい占い師さんはたくさんいるし
それはいるだろうね
だったら、私がそんな値段にしていいのかなって
一番すごい人しか値上げしちゃいけないなら、
ほとんどの人は価格を上げられないよ
まあ、そうだけど
妻を選びたい人にとって、
ほかの占い師がどれくらいすごいかは関係ないんじゃない?
誰かと比べれば、上には上がいます。
知識が多い人。
経験が長い人。
発信力がある人。
有名な人。
しかし、購入者が求めているのは、必ずしも最も能力の高い一人ではありません。
話しやすい人。
自分の悩みを理解してくれる人。
言葉がしっくりくる人。
以前相談して安心できた人。
妻だから相談したい人もいます。
それは、順位で測れる価値ではありません。
私は占いのことを詳しく知りません。
妻がどれほど高度な占術を使っているのかも、正確には説明できません。
それでも、妻が相談者のために長い時間を使い、真剣に言葉を選んでいる姿は見てきました。
購入者が満足し、繰り返し依頼していることも知っています。
だからこそ、妻本人の自己評価だけで価格を決めるべきではないと思いました。
値上げの目的は、もっと稼ぐことではなかった
ここまで話しても、妻の不安が完全に消えたわけではありません。
値上げして、誰も来なくなったらどうしよう。
悪い印象を持たれたらどうしよう。
今までの購入者に申し訳ない。
その気持ちは残っていました。
そこで私たちは、値上げの目的をもう一度確認しました。
何のためにブログをやりたいんだっけ?
旅行とか、好きなことを記事にしてみたいから
夫婦で事業にしたいとも言ってたよね
うん
今の働き方のまま、それはできそう?
無理だと思う
だったら、価格を上げることが目的じゃないよ
じゃあ、何が目的?
妻が新しいことに挑戦できる時間を作ること
もっと売上を増やしたいから値上げするのではありません。
今より楽をしたいからでもありません。
妻が思い描いている生活へ近づくために、仕事の形を変える。
そのための価格調整でした。
売上を最大化することが、私たちの目的ではありません。
現在の生活を守りながら、新しい挑戦へ進める余白を作ること。
妻が無理なく仕事を続けられる状態を作ること。
その基準で考えれば、今の価格を維持する方が不自然でした。
値上げして、本当に大丈夫かな
大丈夫かどうかは、やってみないと分からない
そこは言い切ってくれないんだ
絶対に大丈夫とは言えないよ。
でも、今のままでは何も変わらない
それはそうだね
私たちは、価格を少しだけ上げるのではなく、大きく見直すことにしました。
中途半端な値上げでは、依頼数がほとんど変わらず、妻の稼働も減らない可能性がある。
目的は売上を少し増やすことではなく、時間を作ることです。
そのためには、客数が目に見えて減るくらいの調整が必要でした。
最終的に決めた新しい価格は、これまでの約5倍。
本当に、この金額にするの?
妻がブログに挑戦できるくらい、仕事を減らすなら
誰も来なくなるかもしれないよ
そのときは、また一緒に考えよう
価格を変更する直前まで、妻は迷っていました。
私も、結果がどうなるかは分かりませんでした。
それでも、現在の働き方を変えなければ、妻が望んでいた未来は始まりません。
こうして私たちは、ココナラサービスの価格を大きく変更しました。
次回は、サービス価格を約5倍にしたあと、依頼数、売上、妻の稼働がどう変わったのか。
そして、妻にどのような時間が戻ってきたのかを書いていきます。






